加害者は自分自身をだます。饒舌な応答の被告人に違和感。
①迷惑防止条例違反2件。②強制わいせつ致傷1件の併合裁判。裁判員裁判。
事件は、
①②夜遅くに当時17歳の女子高生の後をつけて、背後からスカートをめくったもの。
③深夜に当時20歳の女性に背後から抱き着き、陰部を触り、女性が抵抗して転んでからも陰部を執拗に触った。女性は足に打撲のけが。
六大学出の事件当時25歳男性、就職後に地方から上京し、半年ほどして交際女性と同棲を始める。会社はブラック企業で毎月100時間の残業や休日出勤があった。交際女性とは女性が情緒不安定で公私ともにストレスを抱えていたという。
裁判は裁判員裁判のため起訴されてから裁判までが時間がかかる(今回は逮捕から約1年かかっている)ので、保釈請求をして保釈されたが、保釈の5か月後に女子高生を複数回にわたって後をつけたということで警察に捕まり、警告を受けている。
私が違和感を感じたのは、自らの犯行を認めて、被害者の気持ちも供述調書を読んで理解できたともいい、再犯防止に向けては入院治療を行う予定だという出来上がった台本を読み上げるかのような、よどみない応答だった。
悪いと思っているのかと聞かれれば、「はい。もちろんです」。犯行時は悪いと思わなかったのかといわれれば「はい。考えられませんでした」などと、顔色一つ変えず迷いなく答えるさまは、よく言えば悟った感じだが、悪く言えば口先だけに聞こえる。
保釈にあたっては、両親が24時間監視する。決して一人では出歩かない。などの誓約書を書いているにもかかわらず、女子高生の後をつけているなどからすると、到底信じることはできないのだが、法廷では最終的には「約束できますか」ということに「間違いありません」と答えれば、それ以上の追及はされない。
私自身にも覚えがあるのが、法廷などではすでに事件はどこか自分のものではなくなり、心が入らず、論理的な思考によって応答はもっともらしい答えをしてしまう。言葉で自分をだますかのように。そんなことを思い出し、被告人にダブって感じた。おそらく、被告人も頭では考えているが心底わかっているとは言えないと思う。
裁判では、言葉でしか処理できないから、裁判官もそれを感じてしつこく念を押していたが、最後は言葉を信じて「約束させる」しかなかった。約束などほんの数か月前にあっさり破って見せたのに。